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About Vegetarianism




 「ヴェジタリアンの団体で研修する」と言うと、大抵の人が「なんでヴェジタリアン?」と怪訝な顔をします。まだまだ日本ではマイナーなヴェジタリアンについて、ここでちょっと説明しておきましょう。

 「ヴェジタリアン」は「菜食主義者」と訳されることが多いのですが、実際には「肉を食べない人」と言った方が正確だと思います。なぜなら、大きく分けて「ヴェジタリアン」には

1. 魚は食べるヴェジタリアン ( mostly vegetarianまたはpescovegetarian)
2. 乳製品や卵は食べるヴェジタリアン ( lacto-ovovegetarian )
3. 穀物、豆類、野菜、果物を食べるヴェジタリアン ( vegan )

の3つのタイプがあり、「ヴェジタリアン」だからと言って必ずしも「野菜だけ食べる人」ということにはならないからです。アメリカ人の中には「レッドミート(牛肉など)を食べないから自分はヴェジタリアンだ」(要するに鶏肉などのホワイトミートは食べる。本来の意味ではもちろんヴェジタリアンではないが、pollovegetarianと呼ばれることも)と思っている人もいるくらいです。
 今欧米で一番多いのは2のタイプです。昔の日本人は、基本的に1のタイプのヴェジタリアンだったと言えるでしょう。VRGのスタッフは、さすがに「ヴェジタリアニズムを普及させる」団体にいるだけあって、3のタイプの人がけっこういます。
 現在、欧米ではヴェジタリアン人口が増えていて、イギリス人の約6%、アメリカでは総人口の約1%が(厳密な意味での)ヴェジタリアンという統計もあります。マドンナ、レオナルド・ディカプリオなどの多くのアーティストや、故ダイアナ妃は熱心なヴェジタリアンとして有名です。また、あのカール・ルイスも実はヴェジタリアン(しかも3のタイプ)だったと知れば、驚かれることでしょう。

 では、なぜ彼らヴェジタリアンは肉を食べないのでしょうか。
 主にインドなどの東洋のヴェジタリアンは、宗教上の理由によって肉を食べません。日本でも仏教の「精進料理」は、鰹節を使わずに椎茸や昆布だけでだしをとっていますね。
 肉は体によくないという健康上の理由を挙げる人も多いようです。いくつかの統計で、肉食とガンの関連性や、動物性脂肪のとりすぎは血中コレステロールを上げるといった指摘がされており、このあたりが健康志向のアメリカ人の興味をひいていると思われます。
 もうひとつ、見逃せないのは動物愛護の精神です。特殊な環境にいる人々(イヌイットなど)でなければ肉を食べなくても生きていける、それなのに食べるために動物を殺すのは残酷ではないかという考えです。さらに、肉食は環境問題や飢餓に関わっているという理由も加わります。
 肉食と環境問題との関わりとしてわかりやすい例を挙げると、畜産業者はコストを抑えるために南米の熱帯雨林を開発し、食肉用の牛を放牧しています。そうした牧場が増えれば増えるほど熱帯雨林は失われ、地球温暖化などの問題を引き起こすことになります。また、牛肉1sを生産するために必要な穀物は16sになると言われています。現在地球上で飢えに苦しむ人々が約8億人もいることを考えるならば、肉を食べることは飢餓を生み出していると言えなくもないのです。
 最近では、O-157や狂牛病といった肉に原因が求められる病気の発生も、欧米の人々の肉食離れの一因になっているようです。他にも、フェミニズムや差別問題の観点からヴェジタリアンになる人もいれば、肉や魚は高いからという経済的理由でそうなるケースもあります。
 このように、「なぜヴェジタリアンになるのか」という問いかけの向こうには、実に様々な背景が見えてくるのです。


 ヴェジタリアニズムについて調べていくにつれて、私自身もあまり肉を食べたいと思わなくなってしまいました。(今は、ほとんどmostly vegetarian〜出された肉は食べないわけではないので〜です。)「パワーつけたいから肉でも食べよっか」とよく友達と焼き肉屋に繰り出していたのに、不思議なものです。そういえば、この”パワーつけたいから肉”というのも、実はあまり根拠のない話だとわかってきました。肉を食べなくても、健康のために必要な栄養素は十分にとることができるのです。(カール・ルイスがヴェジタリアンだったことを思い出してください。)たとえば、大豆は「畑の肉」と呼ばれるほどタンパク質を豊富に含んでおり、さらに悪玉コレステロールを下げる効果があります。(これは肉のタンパク質との大きな違いです。)実際、veganたちは大豆製品をこれでもかというほど駆使して食卓に上らせています。

 それでは、ヴェジタリアンに簡単になれるかというと、これは人それぞれだと思います。肉がないとなんとなく淋しい、という感覚もあるでしょうし、献立を考える時に肉料理は楽だというのもよくわかります。子供たちや若い男性は基本的に肉が大好きです。「今日からヴェジタリアンになる」と宣言して、まったく波風がたたないことはまず考えられません。

 そうしたことも含めて、私はこれからヴェジタリアニズムについてさらに考えていこうと思っています。ちなみに、「ヴェジタリアン」の本来の意味は「健康で生き生きとして力強い人」だそうです。このページ(文字ばかりですみません)を読んでいただいたことで、今まであなたが抱いていた「ヴェジタリアン」のイメージが少しでも豊かなものに変わったのであれば嬉しいです。



*ヴェジタリアニズムについてもっと知りたいという方は、鶴田静さんの著作(「ベジタリアンの文化誌」晶文社、「マザーアース・キッチン」柴田書店など)が手に入りやすいと思います。栄養面での解説は「ベジタリアンの健康学」(蒲原聖可・丸善ライブラリー)が参考になります。もちろん、VRGのホームページをのぞいてくださるのも大歓迎。英語はちょっと、という場合は、日本ヴェジタリアン協会のサイトにどうぞ。


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