9月6日〜大都会〜
 Gainsvilleの楽園に別れを告げ、今日からロス入り。4ヶ月ぶりのロスは、道路は広いし、車もたくさん走っているし、高い建物がたくさんあるし、何より人が多い。空気そのものがせわしなく、ああ都会に来たんだなあ、と思う。
 今日から3日間は、父の別の友人Bobさんの家に泊めてもらう。Mesterさんのところとはまた違った雰囲気の豪邸で、やはりプール付き。Bobさんは趣味人で油絵、石膏、帆船の模型作り、と家のあちこちにその多芸多才ぶりがみてとれる。以前、日本の大会社を辞めてアメリカ暮らしを選んだ人が「こっちでは手に入るものの大きさが違う」というようなことを言っていたけれど、こう立て続けに”それなりの値段で買える”豪邸を見ると、アメリカの広さ(日本の狭さ?)をまざまざと感じる。

9月7日〜太っ腹なアメリカ石油王〜
 「展示してある絵は大したことないけど、とにかく建物がすごい」と評判のPaul Getty美術館へ。Paul Getty(故人)は石油王で、ありあまるお金で財団を作り、美術品をコレクションし、山ひとつ使って美術館を建設。何しろモノレールで上っていかないと展示コーナーにたどりつかないのだから、そのスケールの大きさといったら! 確かに展示品は「いくらレンブラントでもこれはちょっと・・・」というような感じなのだけど(でも、写真のコーナーは必見。アレクサンドル・デュマやビクトル・ユーゴーのポートレイトなどがある)、建築と庭を見ているだけで一日が過ぎてしまうほど、ハードウエアはゴージャス。山頂からはロスの街全体が見渡せ、天気が良ければ海も見えるらしい。どこで入場料払うんだろう、と思っていたら、なんと無料!目眩がするほど、アメリカ石油王はお金持ちなのであった。

9月8日〜旧交に接する〜
 父の30年以上にわたる知り合い、中村さんご夫妻、アドラーさんご夫妻と昼食を共にする。中村さんご夫妻は日系2世、アドラー夫人は日本人でやはり30年以上アメリカに住んでいる人なので、英語と日本語がミックスされた不思議な会話になる。おちょこKが寿司ムーブメントを取材していると言うと、「ブームそのものは20年前から始まったけれど、今でもunbelivableだと思う」とアドラー夫人。なんでも、ロスよりニューヨークの寿司の方がおいしいとは彼らの意見。(魚がいいんだそう。)
 彼らは父の元上司で年齢もかなり上。なんとなく青年にかえったような父の姿に、こうして数十年にわたる交友を続けていくのはすごいことだなあ、と思う。

9月9日〜エンジンフル稼動〜
 一足先に帰国する両親を見送って、空港傍のモーテルにチェックイン。今日から久々に仕事モードで寿司の取材にとりかかる。アメリカで30年以上ビジネス・ニュースを発行してきた方にまずお目にかかり、その後共同貿易という寿司ブームの草分け的存在の会社の社長さんにインタビュー。夜は、日本びいきの青年作家とチャイニーズ経営のおしゃれな寿司やで食事をしつつ、彼の寿司に対する熱い想いを聞く。モーテルに戻ってシャワーを浴び、明日の準備を終えたらもう3時。いきなりのフル稼動に、脳からドーパミンがものすごい勢いで出ているのを感じる。

9月10日〜腱鞘炎一歩手前〜
 頭の中はすっかり寿司。今日も、スーパーへの寿司バー出店で急成長のAFCという会社の社長さんへのインタビューから始まり、4月終わりに訪ねたカリフォルニア寿司アカデミーの理事長、講師の方、卒業生で今寿司職人として働いているMike、そしてまたまた夜はアドラーさん夫妻行きつけのTakaoという高級寿司やでご馳走になる(ごま豆腐に涙)。一日メモをとりっぱなしだったので、途中で腱鞘炎一歩手前に。
 移動のタクシーの運転手さんがアフリカ・エリトリアの出身で、人口300万人しかない小さな国が隣の大国エチオピアからいかに独立を勝ち取ったかの話で盛り上がる。「自分は20年前に観光で来て、一生懸命勉強して働いてアメリカ市民になった。そんなことが可能な国は世界中でアメリカだけだ」と運転手さん。このふところの深さがあるからこそのアメリカなのかもしれない。

9月11日〜49歳で世界一〜
 一昨日初めて会った人から「49歳で格闘技のワールドチャンピオンのインタビューをしませんか」と話があり、取材をする。とても50に手が届くとは思えない若々しさのRollin Kwonさんは韓国人。13年前にアメリカに来て、スタントマンから始め、今では格闘技を教える学校を経営、スティーブン・セガールなど錚々たるハリウッドスターをも教えているそう。Full Contactというメキシコで盛んな、1ラウンド3分3ラウンドで相手を倒さなければならない大会で、3年連続チャンピオンというのだから脱帽。今度日本でフランシスコ・フィリオ(!)相手に試合をするそうで、そのためのインタビューなのだ。そんなすごい格闘家でありながら、表情もおだやか、「いつでも家に来てください」ととってもいい人なKwonさん。試合の予定はまだ未定だそうだけど、あのフィリオと闘うところを早く観てみたい!

今後の予定〜ロスを9時55分発(夜)のアムトラックで3泊4日かけてシカゴまで。シカゴからウィスコンシン・マディソンへ連絡バスに4時間以上揺られて行くことになっています。(現地時間15日9時過ぎ。)アメリカの車窓の景色を楽しんできます!(無事に着きますように!!!)

9月12日〜ロス空港でラーメン〜
 モーテルを11時にチェックアウト。ダウンタウンのユニオン・ステーションに暗くなる前に着くようにするとしても、7時間以上つぶさなければいけない。とりあえず空港まで行けば食べ物もあるし、座り心地のいい椅子だってある。「なんだかラーメンが食べたいなあ」と思っていたら、さすがロス空港、ちゃんと日本食のコーナーが! 7ドルとちょっと高いけど(味もいまいち)、久々に丼をかかえて満足のため息をもらす。飛行機の離発着が見える席に陣取り、取材のメモを整理しつつ、時折、周りの人との会話を交わす。空港にはいろいろな国籍の人がいて、見ているだけでも飽きない。
 空港からバスに揺られてダウンタウンへ。ロスのユニオン・ステーションは思ったよりずっときれいな駅。ここで2時間ほど手紙を書きながら過ごし、いよいよ列車に乗り込む。

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